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第三者委員会について

第三者委員会とは

ここのところ、第三者委員会のあり方が問われる報道等を目にすることが増えたように思います。そこで、第三者委員会について少し考えてみたいと思います。

日本弁護士連合会は、2010年に「企業不祥事等における第三者委員会ガイドライン」を策定しており、参考になります。

企業等の不祥事が生じた場合に、不祥事によって失墜してしまった社会的信頼を回復するため、企業等が外部者を交えた委員会を設けて調査を依頼するケースが増えていることは、皆さまも感じているところではないでしょうか。なお、第三者委員会が設置される代表的なケースとして、学校におけるいじめ自死事案もあります。地方における第三者委員会としてはこちらの方が主流かと思いますが、本質的な部分は企業等不祥事における第三者委員会と重なりますので、ここでは企業等不祥事における第三者委員会についてお話しします。

その外部者を交えた委員会には大きく分けて以下の2つのタイプがあるとされています。

① 企業等が弁護士に対し内部調査への参加を依頼することによって、調査の精度や信憑性を高めようと              するもの(「内部調査委員会」と呼ぶべきもの)

② 企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会(「第三者委員会」と呼ぶべきもの)

①は、内部調査の信頼性を向上させることにより企業の信頼回復を図るというものであり、②は、経営者等自身のためではなく、すべてのステーク・ホルダーのために調査を実施し、それを対外公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とするとの点に違いがあります。

どちらのアプローチが正しいということはないと思いますが、昨今の企業等のあり方に対する社会の目の厳しさ(「コンプライアンス」という言葉が社会に浸透してきているのはその表れではないかと思います。)を考えると、企業等の信頼回復を図るという目的を達成するためには、②のアプローチが求められることが多いのではないかと思います。

とはいえ、独立性の高い第三者委員会を設置することに対しては、企業等においてもそれなりの覚悟が必要であり、それが不十分であると公正さについて疑念を抱かれてしまうようなメンバー構成になるなどして、信頼回復という目的を十分に達成できないどころか、問題のさらなる深刻化につながることもあり得るでしょう。

企業等の不祥事について第三者委員会が設置されるケースが増えていることは企業等が社会的責任を果たすうえで望ましいことですが、第三者委員会の調査・報告に疑問が持たれるような事態が生じると、いずれ「第三者委員会なんて信用できないから意味ないよね」と言われてしまうような時代が来るかもしれません。私たち弁護士は、法律の専門家としての信頼や調査能力・法的な判断力等に対する期待から第三者委員会の委員に選任されることの多い職業です。第三者委員会が社会的に意義のあるものとしてその地位を確立していくためには、私たち弁護士の果たす役割・責任もとても大きいといえます。

 文責 弁 護 士 川 崎 幸 治