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労働条件明示義務の改正について

労働基準法により、企業には、雇用契約時に、一定の労働条件を労働者に明示することが義務付けられています(以下「労働条件明示義務」といいます。)。この労働条件明示義務の内容が本年(令和5年)3月30日に改正され、令和6年4月1日より施行されます。

労働条件明示義務は、労使間で労働条件を明確にしておくことで労働条件をめぐる紛争を防止するとともに、企業側が従業員の募集時に好条件を提示しておきながら、実際に就労させる際には募集時に提示した条件より劣悪な条件での労働を強いることを防止するために定められたものです。

明示の対象となる労働条件のうち、労働契約の期間、有期契約の更新基準、就業場所・従事すべき業務、労働時間・賃金、退職などの重要な事項については、書面を交付して明示することが求められていますが、それ以外の事項は、口頭など他の手段でもよいとされています。

今回の改正の趣旨は、主に有期雇用の労働者の権利を明確にすることで、当該労働者が望む場合に無期雇用に転換して有期雇用契約者の雇用の安定性を促進するとともに、有期雇用の労働者に、キャリアの展望にかかる予測可能性を与えることにあります。

今回の改正で明示の対象に含まれることとなった事項として、無期転換申込権があります。無期転換申込権とは、有期雇用契約者が更新により通算契約期間が5年超えとなる場合に使用者に申し出ることで、無期雇用契約に転換することができる権利のことをいいます。

なお、無期転換申込権を行使した場合、これまでの労働条件のまま無期雇用となるだけであり、正規雇用(いわゆる正社員)に変わるわけではありません。正規雇用の従業員とは福利厚生、昇給や賞与の取扱いの面で異なることとなります。

無期転換申込権は、平成24年の労働契約法改正(平成25年施行)により制度化されたものです。 ところが、厚生労働省の調査によれば、令和3年までの間に無期転換申込権を行使した労働者は約3割にとどまり、制度が十分に活用されていない状況にありました。

そこで、この点を解消するために、無期転換申込権があることの明示が求められることとなりました。その他にも、無期転換権行使後の労働条件の明示、更新上限の明示など、有期雇用契約者の権利関係を明確にする事項が追加されています。

労働条件明示義務に違反した場合、30万円以下の罰金に処せられることとなるほか、明示している労働条件と実際の労働条件が異なる場合、労働基準法上、労働者に即時解除権が与えられており、帰郷旅費の支払義務も生じることとなる可能性があるため、違反した場合の企業の不利益は小さくありません。

企業におかれては、書面での明示が義務付けられている事項については、雇用契約書ないし労働条件通知書を交付し、それ以外の事項については就業規則に定めることで対応されているものと思われます。

来年4月1日の施行に備えて、自社の契約書、労働条件通知書及び就業規則について、上記改正内容を踏まえた内容にアップデートすることが求められます。

当事務所においては、大小様々な業種の企業と顧問契約を締結させていただく中で、労働関係を含めた契約関係に関する多様・多数のご相談を取り扱っております。お気軽にご相談ください。

文責 弁護士 伊 江 優 太