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相続法改正について

平成30年7月、いわゆる相続法が改正されました。

その基本的な考え方は、

・生前贈与・遺贈・遺言を利用しやすく

・遺産分割完了までの相続人等の扶養の確保

・相続人間の公平

という点にあるといえます。

 

その具体的な内容をいくつか見ていきましょう。

① 自筆証書遺言に添付する目録は自筆でなくてもOK(968条)

これまで自筆証書遺言は、添付する目録も含めて、全文を自書して作成する必要がありました。今回の改正は、その目録をパソコンで作成したり、通帳や登記簿謄本などのコピーを添付することでOKとしました。ただし、その1枚1枚(両面の場合は両面とも)に署名押印が必要ですので注意が必要です。

② 法務局で遺言書を保管してくれる(法務局における遺言書の保管等に関する法律)

これまで自筆証書遺言は自宅で保管されることが多く、それによって紛失や廃棄、書き換えなどの問題が起こっていました。

そこで、自筆証書遺言をより利用しやすくするため、法務局で自筆証書による遺言書を保管する制度が創設されます。

③ 配偶者居住権の創設(1028条~1036条)

今回の改正のひとつの目玉ともみられているのが、この配偶者居住権です。

配偶者居住権は、配偶者が遺産となる建物に相続開始時に住んでいた場合に、原則として終身の間、その建物を無償で使用することができる権利です。要するに、例えば配偶者が住んでいた建物を別の相続人が取得した場合であっても、その配偶者は、配偶者居住権に基づきそこに住み続けることができるということです。

配偶者居住権は、売ったり貸したりすることはできず、善良な管理者の注意をもって居住する必要があります。

④ 配偶者短期居住権(1037条~1041条)

配偶者短期居住権は、配偶者が遺産となる建物に相続開始時に住んでいた場合に、遺産分割がなされるか、または、相続開始から6カ月経過する日のいずれか遅い日までの間、その建物に無償で住み続けることができる権利です。

上記③は、原則として終身の居住権ですが、この短期居住権は、遺産分割が決まるまでの間は配偶者の居住権を認めよう、遺産分割がすぐに決まったとしても、6カ月は居住権を認めようというものです。

⑤ 仮払い制度(909条の2)

当面の生活費や葬式の費用などを確保するため、遺産分割前であっても裁判所の判断を経ずに預貯金を一定額引き出せるようになります。

上限は金融機関ごとに150万円とされています。

⑥ 相続人以外の親族による特別寄与料の請求が可能に(1050条他)

相続人ではない親族が被相続人の介護や看病をしても、その親族は必ずしも遺産の配分を受けることはできませんでした。今回の改正では、相続人ではない親族も、無償で被相続人の介護や看病などの労務の提供をして、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には、相続人に対し、金銭(特別寄与料)の請求をすることができるようになります。

 

それ以外にも、遺言執行者、相続外第三者との関係、遺留分などについての改正もなされています。

改正相続法は、原則として公布の日(平成30年7月13日)から1年を超えない範囲内で、政令で定める日(平成31年7月1日)から施行されます。例外として、上記①自筆証書遺言の方式緩和は平成31年1月13日から、上記②遺言書の保管は平成32年7月10日から、上記③④配偶者(短期)居住権は、平成32年4月1日から施行されます。                文責:弁護士 川崎幸治