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成人年齢の引き下げについて

 

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2022年4月1日より、民法の定める成年年齢が18歳に引き下げられることになりました。

現行の民法は、第4条で「年齢二十歳をもって、成年とする。」とし、第5条1項本文で「未成年者が法律行為をするには、法定代理人の同意を得なければならない。」、同条2項で「前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。」と定めてます。

つまり、未成年者が法定代理人(親など)の同意を得ずに行った法律行為(ここでは、売買契約や賃貸借契約などの「取引」だと考えてください。)は、取り消すことができる、要するに「なかったこと」にできます。このように、未成年者は、民法によって、取引上の保護が与えられているのです。

今回の民法改正。これによってこれまで取引上保護されてきた18歳以上20歳未満の「未成年者」は、このような保護を受けることができなくなります。

成年年齢の引き下げによる大きな問題の一つが、まさにこの点にあると考えられています。十分な判断能力がない若者が悪徳業者などに狙われてしまい、深刻な消費者被害が発生する恐れがあるのです。

そもそも、成年年齢引き下げの議論が始まったきっかけは、平成19年5月に制定されたいわゆる「国民投票法」で、憲法改正の国民投票権を有する者の年齢を18歳以上と定めたところにあります。

つまり、成年年齢引き下げは、国の大事なことを決めるにあたって、未来を担うより多くの若者に参加してもらおうという社会参加の視点から始まってます。「18歳選挙権」もこの流れによるものです。

このような経緯で始まった成年年齢の引き下げだからか、取引における未成年の保護に対する手当は、十分とは言えない状況にあります。そのため、未成年者が取引に関する知識を身につけることの重要性、消費者教育の重要性はこれまでと比べて一層高まっています。

家庭や学校のみならず、市民団体やマスコミにおいても、もってこの問題を取り上げ、啓蒙に努めていただきたいと考えています。

文責:弁護士 川崎幸治