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選択的夫婦別姓制度について

2021年6月23日、最高裁判所大法廷は、夫婦同姓を強制する民法750条及び戸籍法74条1号について憲法24条(婚姻の自由)に違反するものではないと判断しました。

この裁判では、結婚を希望する人たちがどちらかの姓を自由に選択しうるとしても、夫婦同姓を受け入れない限り法的な結婚ができないという点において、夫婦同姓が強制されており、しかも、現実には結婚した夫婦の大半において女性が改姓し、アイデンティティ-の喪失や社会的不便・不利益を受けていることから、上記の法律が憲法24条や憲法14条に反するのではないかということが問題となりました。

しかし、これに対して裁判所は、「夫婦の姓についてどのような制度を採るのが立法政策として相当かという問題と、夫婦同姓を定める現行法の規定が憲法24条違反して無効であるか否かという憲法適合性の審査の問題とは次元を異に」しており、「制度の在り方は国会で論ぜられ判断すべき事柄に他ならない」として、両規定を合憲と判断しました。

現在、選択的夫婦別姓制度の導入に賛成する割合は、反対を上回っており、特に、18歳から29歳までは賛成50.2%、反対19.8%、30歳から39歳までは賛成52.5%、反対13.6%となっており、特にこれから婚姻することを考える者が多い世代を中心として、選択的夫婦別姓制度の導入を支持する世論は高まっています(2017年内閣府「家庭の法制に関する世論調査」より)。また、婚姻において夫婦同姓を義務付けるのは、もはや我が国だけで、国連の女性差別撤廃委員会も、日本政府に夫婦同姓を強制する規定の改正を繰り返し勧告しています。このような状況も踏まえると、国会がこれ以上民法750条等の改正を行わない状態を継続させることは、合理的な期間を超えた立法不作為というほかありません。

今回大法廷判決において合憲の立場を採った3名の裁判官の補足意見にも、「このまま社会状況の変化が進めば夫婦同姓規定を違憲とする余地がある」と書かれています。国会は、最高裁が国会における議論を求めていることも重く受け止めなければならないと思います。

私も、結婚するとき、夫の姓に変更しました。ですが、職務上の氏名として今でも旧姓を使用しています。そうしなければ、結婚前の自分がいなくなってしまうような感覚がありました。法的な結婚を希望する人たちが、本当の意味で自由に姓を選択できるよう、すみやかに両規定を改正し選択的夫婦別姓制度を導入するべきだと考えます。