ロシアの軍事行動と国際法
ロシアの軍事行動と国際法
ロシアのウクライナに対する軍事行動が大きな問題となっています。
この問題をめぐってロシアの軍事行動は「国際法違反」だといわれることがよくありますが、ここで念頭に置かれているのは、主に国連憲章、とりわけ第2条4項ではないかと思われます。その条文は次のようなものです。
「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」
たしかに、ロシアの軍事行動はこれに違反していると考えるのが自然だと思います。
にもかかわらず国連がロシアに対する措置をとることができないのは、ロシアが常任理事国として拒否権を持っていることが大きく影響していることは広く知られているところです。
では、このようなときに国際司法裁判所(International Court of Justice、ICJ)は機能しないのでしょうか。
国際司法裁判所は国連の主要機関のひとつで、国家間の紛争について裁判をするものとされています(国連憲章第14章)。そして、国連憲章第94条1項は、「各国際連合加盟国は、自国が当事者であるいかなる事件においても、国際司法裁判所の裁判に従うことを約束する。」とあります。
現に、ウクライナは、ロシアが虚偽の主張に基づいてウクライナに対する軍事行動を行っているとして、ロシアを国際司法裁判所に提訴しており、国際司法裁判所は、ウクライナの要請に基づき、軍事作戦を即時停止することなどを求める暫定措置命令を発出しています。しかし、ロシアはそれに従わないとしています。
国連憲章には、国際司法裁判所の判決に従わなかった場合のことも規定されています。しかし、その内容は「事件の一方の当事者が裁判所の与える判決に基いて自国が負う義務を履行しないときは、他方の当事者は、安全保障理事会に訴えることができる。」(国連憲章第94条2項)というものです。安全保障理事会の所管ということになれば、もはや結果は見えてしまっています。
このように、国際法という観点からも、ロシアの軍事行動を止めることは難しいのが現状です。
今年、沖縄県は本土復帰50年です。
平和の大切さや尊さを改めて考える大きな節目だと感じている方も多いと思いますが、このたびのロシアの軍事行動は、平和であることの難しさを痛感させられる出来事になったのではないかと思います。
平和を願うだけではなく、平和であるために私たちに何ができるかを考えることも重要な時に来ているのではないかと思います。
文責:弁護士 川 崎 幸 治