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入管法(出入国管理及び難民認定法)改正案の廃案について

令和3年5月18日、衆議院で審理されていた入管法の改正案の採決が見送られ、事実上の廃案とされました。

入管法の改正案については、難民等の帰国できない事情を持つ外国の人々が強制送還を拒んだ場合に刑事罰を科す点や、難民認定申請者を強制送還できるよう例外規定を設けるなどの点について、国内の専門家だけでなく、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会などからも、厳しく批判されていました。

具体的には、入管法の改正案は、難民認定申請は原則2回までとし、3回目以降の難民認定申請者を強制送還にする、自国民の受取りを拒否するなど帰国できない事情のある外国人が強制送還を拒否した場合における刑事罰を設けるなどの点が、難民条約第33条の「締約国は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見のためにその生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない。」とする規定に違反するおそれのあるものでした。

また、そもそも、日本国における入管法は、退去強制事由(在留期限を徒過し在留等)に該当する疑いさえあれば、裁判所による司法審査を通さずに、入国管理局の判断により収容できる仕組みであり、現に、在留資格のない外国人は原則すべて収容するという「全件収容主義」をとられ、入国管理局が発付する退去強制令書があれば、退去時まで無期限で収容することが可能であり、実際に在留資格のない外国人の長期収容が問題視されてきました。それにもかかわらず、入管法改正案では、収容するか否かの判断に当たって司法審査(裁判所の判断)を不要としており、また、収容の期間の上限は設けられていませんでした。

今般、入管法改正案は、事実上廃案とされましたが、依然として、収容に当たって司法審査を不要されている問題や収容期間の上限がない問題は解決されておらず、国連人権規約に反する疑いが強いです。

一刻も早く国際的基準に則った形で入管法の改正がなされることが望まれます。

文責:弁 護 士 坂 田  優