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民事執行法の改正

令和元年5月に民事執行法が改正され、令和2年4月1日より改正民事執行法が施行されました。

民事裁判においては、勝訴判決を得たとしても相手方が任意に債務を履行しない場合には、別途、強制執行の申立てをして権利の実現を図る必要があります。例えば、債権者が100万円を貸したことを根拠に、「100万円支払え」という訴訟を提起し、勝訴判決を得た場合において、債務者が100万円を任意に支払ってくれればよいですが、任意に支払わないときには、債権者において、債務者の預金や給料等の差押え等の強制執行の手続きを取る必要があります。

しかしながら、債務者の財産の所在が分からないため、差押えができないというケースにおいて、これまでは、債務者の財産開示制度が不十分あったことから、債権者が労力をかけて裁判を起こし、勝訴判決を得たにもかかわらず、最終的な権利を実現できないという事態が生じていました。

そのため、民事執行法が改正され、従前からの制度である財産開示手続の実効性を高めるために見直しが図られると共に、財産開示に関する新たな制度が創設されました。

具体的には、これまでも財産開示手続という裁判所が債務者に対して財産の開示を命ずる手続が存在しましたが、開示義務者が、正当な理由なく、呼出しを受けた財産開示期日に出頭しなかった場合等における制裁が30万円以下の過料(行政罰)に過ぎず、実効性が不十分であり、実務上もあまり利用されていないのが実情であったところ、改正法では、不出頭の場合等における制裁について、「6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金」という刑事罰が科せられることとされました。実際に、令和2年10月20日、裁判所から財産開示手続の呼出しを受けたにもかかわらず、出頭しなかったことを理由に書類送検された事例が出ており、当該手続が実効性ある手法に変わることが期待されます。

また、財産開示に関する新たな制度として、債権者の申立てにより、裁判所を通して、銀行等の金融機関から債務者の預貯金債権等に関する情報を取得する手続や市町村や日本年金機構等から債務者の勤務先を特定するのに必要な情報を取得する手続等が創設されました(給与債権にかかる後者の情報取得手続きについては、養育費、婚姻費用等の支払請求権又は生命・身体の侵害による損害賠償請求権に関する判決を取得している場合に限り、利用できます。)

このように民事執行法の改正により、債務者の財産開示に関する制度が拡充されましたので、債務者の財産の所在が分からない場合においても、勝訴判決が絵に描いた餅とならずに、債権者の最終的な権利実現が図られることが期待されます。